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もともと魚好きということで、寿司屋にもよく通ったが、寿司を食べるだけではなく酒もよく飲んでいた。 とくに、自律神経の世界に目覚め、病院を辞めてからは運動もしなくなったのにそれまで以上によく食べ、よく飲んでいたためベスト体重の六十二キロより十キロ増えてしまったほどだ。

S先生は、食事の仕方についても、「朝飯なんか、食べちゃだめだよ!朝は排池の時間なんだから、朝から食べ物をドカドカ入れちゃったら、本来の排池が滞るでしょう。 そうすると、毒も滞っちゃうからね。
朝は固形物なしの液体だけで済まして、それでも排便があるのが理想だから」と話しており、食事の量も、「食べすぎは毒の素に食べないほうが、毒は抜けやすくなるんだから。 おとうさんがいま食欲がないのは、体から毒を出すための正常な反応なんだよ。
無理に食べる必要はないから」と、力説していた。 長年の習慣から朝食をやめることには抵抗があったので、以前より量を減らし、前述のとおり玄米ごはんと味噌汁、旬の野菜、焼き魚少々程度の一汁三菜の朝食をとるようになった。
すると、確かに体が軽く、キレもよくなったのである。 次第に元気になるにつれ、食欲が湧くようになったが、それでも食べすぎには注意した。
適度な空腹感を残しておくことが、心身ともによい状態を生み出すことがわかったためである。 腹七分目?八分目に抑えておけば、食べ過ぎてだるいなどというこうつが治りかけたころ、私は水野南北という江戸時代の著名な観相家の思想と出合った。
「三年食を慎めば運が開ける」と説く彼は、早くに両親を亡くし極悪非道の限りを尽くしていた。 そんなある日、町の観相家に、「お前の顔には死相が漂っている。
死にたくなければ、今日から麦飯だけを三年間食べ続けろ」といわれ、恐れおののきそれを実行。 三年後、すっかり様変わりした彼をみたその観相家は、「運命が変わった」と驚いたという。

一刻も早くきちんと治療ができる体に戻りたかったし、治療ができるようになってからは、もっともっとよい治療ができる体になりたいと願っているため、現在に至るまで「小食」(食べ過ぎない食事)は欠かせない習慣となっている。 とも決して起こらない。
南北はそれから、人の運と食との関係を研究し、「どのような吉相に生まれた人間でも腹いっぱいに飲み食いすれば、運命は凶となる。 逆に、どのような凶相の持ち主であっても、小食に徹すれば運命が反転し吉となる」という原則を見出した。
その原則をもとにした彼の占いは、誰もが驚くほどの的中率を見せたと言われる。 南北の場合は、「麦飯」を食すことを基本としていたが、私はこれを「玄米」に置き換えて、彼の思想を師匠と仰ぎながら、日々実践している。
とにかく体を温めて冷えを取る。 それが毒出しの基本。
その一、汗をかくまで入浴。 それまでの私にとって、風呂は「汗を流す場」でしかなかった。
しかし、これまたS先生から、「半身浴でじっくり汗をかくと、毒が流れるんだよ。 体が軽くなって気持ちいいから」と勧められ、実行。

すると、先生の言葉はウソでも大げさでもなく、本当に体が軽くなって、幸せな気持ちになるのである。 汗をたっぷりかくことが、ここまで心地よいとは。
運動しているころは当たり前に思っていた感覚が久々に蘇った。 以後、さらにたっぷり汗をかけるよう、塩(天然塩)を加えたり、ゲルマボールを入れたり、あれこれ試している。
また、はじめは教え通りの半身浴(へソの辺りまで三十八度程度のお湯にじっくりつかる)を行っていたが、お湯の温度は四十一度程度に上げて湯量も胸の下くらいまでのほうが自分にはしっくりくるようになった。 さらに、首の付け根と一肩甲骨の間をときに湯船に沈めてじっくり温めてやると、体調がグンとよくなる。
ここは、心身をつなぐ場所なのだろうか。 頭から体にかけてスーツと「気が通る」ような、独特の爽快感があるので、興味のある方は試してみてはいかがだろう。
ガンでもなんでもそうだが、悪いものは固まり、よくなるものは散らばっていくという法則がある。 血流が悪ければ体は固まり、よければ体はやわらかくほぐれていくのだ。
その法則から考えても、入浴によって循環をよくすることは、多くの病気に効果が期待できる。 元気になってからも、毎晩の入浴はもとより、患者さんを診察したあとやちょっと疲れたなと感じたら、こまめに入浴して「毒出し」ケアに努めている。
「足が冷えて仕方がない」とS先生にうったえたときに、すぐに言われたのが、「シルクの五本指ソックスの上に、綿もしくはウールの靴下を重ね履きすると足先が温まるよ。 冷えているのは毒が出ている証拠だから、いちばん毒を吸い取るシルクを身につけていれば、毒もどんどん出て行くわけ」だった。
そこで、さっそく東京にあるジャパンシルクセンターなどで廉価な五本指靴下やソックス、下着、さらにはパジャマをそろえて送ってもらった。 劇的な効果というほどではないが、シルクの製品は肌なじみがよく、気持ちよく身につけられる。
おかげで、あれほど頑固な冷えもいまはすっかりなくなり、真冬でも全身がポカポ力している。 いちばん冷えがひどく、寝つきも悪かったころに使ったのが、陶器の湯たんぽである。

プラスチック製品よりも保温性が高く、体を心底から温めてくれる。 夜ふとんに入るときに、湯たんぽを入れて足先をあたためる。
体の冷えがきつくてつらい、という方は昼間なども、ひざの上に乗せておくとよいと聞く。 湯たんぽは、冬だけでなく、夏も利用できる。
夏の体は、冷房で意外なほど冷えきっているので、こまめに用いて血流をよくするとよいだろう。 家族がうつ状態に陥って困っている方や、落ち込みからなかなか立ち直れない方は、ぜひ湯たんぽをためしてほしい。
全身があたたまると心もほぐれ、気持ちが明るくなるのが実感できるはずだ。 うつの間、家の中に閉じこもっていた私だが妻から、「せっかくだから外に出たら」とすすめられ、勇気をふるって毎朝家の周辺を散歩するようになると、日に日に、「顔色がよくなった」と人から指摘されるようになった。
体の血流をよくするとともに、精神的なリフレッシュにもつながっているようだ。 実際、歩きながら何気なく考え事をしていると、次々と新しいアイディアが浮かんでくる。
治療法なども、これまで見えなかったことが、「これだったのか!」とばかりにひらめくことがあり、帰宅してからさっそく患者さんの治療に反映させている。 いまや毎朝、一キロほど家の周りを歩くのはすっかり日課となった。
家庭菜園での土いじりとともに、季節の移り変わりを肌で感じる大切なひとときだ。 体を動かすと言えば、ゴルフに行くだのスポーックラブに行くだのとしか考えていなかったが、もっとも基本となるのは自分の住処の「掃除」である。
掃除は、自分のために体を動かすだけではなく、家族や家のためにも貢献できる唯一の機会と言っていい。 私は病院を辞めさせられるまでは、四六時中家をあけており、家のことなど何も知らなかった。
たまに日曜日に家にいることがあると、子供たちが妻に、「なんでお父さんが家にいるの?具合でも悪いの?」と聞いているほどだったのである。 家の掃除を手伝うようになって、ようやく妻の苦労が本当の意味でわかってきた。


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